あのころ

【あのころ】赤飯おにぎり

あの頃は、なんだかよく分からなかったけど、いま思い返すと感慨深いことって多いなと思う。

人生観変えがち

『人生観が変わった』という言葉を最初に聞いたのは、大学3年の終わりで就職活動が始まった時だった。

今はどうなのか知らないけど、当時は大学生バックパッカーが多く存在していて、東南アジアやインドといった国へ、皆、自分探しの旅に出かけていくことが流行っていた。

僕も類稀ず、バックパッカーで自分探しの旅に出かけるんだけど、行き先だけは皆と同じにしたくなくて、北欧に3週間滞在したりしていた。

SNSはmixi全盛期で、マイミクが海外に行けば必ずと言っていいほど、出発の挨拶に始まり、現地の報告があり、帰国の連絡で締められる。

さらに、1週間ぐらいすると、どこどこに行ってたのが懐かしいとか言って、写真をアップしてくれる。

キャンパスで会えば、どこどこだとトイレにティッシュペーパーを流しちゃいけないなど、異国文化の知識をひけらかしていた。

僕が就職活動をしたのは2007年なのだけれども、履歴書にこれといって書くことがないものは大概、「バイト」「サークル」「バックパッカー」のどれかを頑張りました、という勢いで就職活動を乗り越えようとしていた。

その中で「バックパッカー」を選ぶ者は、ただ計画性なしに海外旅行に行って帰ってきた経験を『人生観が変わった』という言葉で、素晴らしい経験かのように語るのだ。

つまり、「バックパッカー」と「人生観の変化」がセットなって、履歴書にかける項目になるのだ。

しかし、確実に言えることは、海外に行って帰ってきただけじゃ、人生観が変わっても、何のアピールにもなっていないということだ。

就職先で出会った同期のハセガワ

僕はバックパッカーで人生観が変わりました、という何のアピールにもならない履歴書で採用してくれた会社に入社することになった。

時期としては、2008年の新卒入社になるんだけど、就職バブルと言われていて、まあとにかく就職しやすい年と言われていた。

団塊世代が抜けることも相まって、どの会社も募集人数が多かったようだ。

同期は50人ぐらいいて、その中のハセガワと家が近かったこともあり、親しくなっていった。

そして、このハセガワが僕の人生観を変えてくれたのだ。

赤飯のおにぎり

突然ですが、コンビニのおにぎりって何を買いますか?

僕は、必ず「うめ」です。

昼食であれば、おにぎり2つは買うので、うめに加え、その日の気分に合わせて「さけ」「こんぶ」「おかか」のどれかを選ぶことが多かった。

そう、ハセガワと出会うまでは。

社会人としての緊張感がまだ芽生えないまま、ゴールデンウィークを過ぎた頃、僕らはまだ新入社員研修の真っ只中で、毎日座学を強いられていた。

午前中の眠くなりそうな研修が終わり、ハセガワを含めた同期いく人でコンビニへ昼食を買いに行ったのだ。

僕は、うめおにぎりとさけおにぎりとカップヌードルシーフードとファミチキとお茶を買う。

会社は川の近くにあって、それぞれ自分の買い物が済み次第、川沿いのデッキに集まって午後に向けて腹を満たそうとしていたのだ。

まさにその時、ハセガワが手にしていたのが赤飯おにぎりだった。

「ハセガワ、なにそのおにぎり・・」と僕は信じられないものを見てしまったかのようなトーンで言う。

「え、赤飯のおにぎり」

ハセガワも、人はあんまり赤飯のおにぎりを手に取らない、ということは分かっているようで、僕の問いにそこまで驚きはないようだった。

「いや、おれ人生22年生きてきて、コンビニで赤飯のおにぎり買っているやつに初めて会ったわ。というかむしろ、赤飯のおにぎりなんてハセガワ以外買う人いないんじゃね?」とちょっと小馬鹿にした口調で言う。

すると、ハセガワは赤飯のおにぎりを選ぶ意外な理由を教えてくれる。

「ふつうのおにぎりだと死んじゃうんだよね」

「え? どういうこと?」

「ふつうのおにぎりだと、喉をつっかえて息ができなくて死んじゃうの。だから、赤飯のおにぎりみたいにしっとりしたのじゃないと食べられないんだよね」

人生観が変わった瞬間である。

そうか、赤飯のおにぎりは、ふつうのおにぎりだと喉をつっかえて息ができなくなる人のために存在していたのか。

新たな発見への感動と同時に、アレルギーとの関連も頭の片隅をよぎる。

アレルギーは好き嫌いではなく、そのものを受け付けることができない体質の問題である。

僕は、甲殻類アレルギーのクロちゃんが、エビを焼いた煙を浴びただけで、目が血走っていたことと、蕎麦アレルギーのトッキーが、修学旅行で枕がそば殻かどうか確認をしていたことを思い出していた。

そうするとハセガワのおにぎりについても、腑に落ちてくる。

つまり、ハセガワはふつうのおにぎりアレルギーで、その代替品として赤飯おにぎりを食べていたのである。

地球上で愛赤家は2人

マッキー

次の日、僕は初めてコンビニで赤飯おにぎりを買ってみることにした。

おそらく、地球上で赤飯おにぎりを購入しているのは、ハセガワと僕だけだ。

正直、コンビニのおにぎりの棚から赤飯おにぎりを取るのは、とても恥ずかしい行為のように思えた。

なぜなら、昨日までコンビニの赤飯おにぎり買うやつなんて地球上にいないと思っていたのに、まさか身近に一人存在して、さらに自分までその一員になろうとしているからだ。

変な勧誘にまんまと騙されてしまった気持ちになる。

誰も知る由もない恥じらいと戸惑いの中、なんとか購入して、いつも通り川の近くに同期が集まる。

もちろん、その中にはハセガワもいて、声をかける。

「赤飯のおにぎり買ってみたよ」

「お、一緒じゃん」

ハセガワのコンビニ袋を覗くと、やはり赤飯おにぎりが入っている。

どれ、赤飯おにぎり処女を捧げようじゃないかとビニルをはがそうとすると、意外なことが判明する。

引っ張る場所が1点しかないのだ。

ふつうのおにぎりは、3ステップで開封するのが定番だ。

三角形の上の頂点にあるテープを引いて、裏面の表示ラベルをも真っ二つにする。

それから、向かって右の頂点を引っ張ると、おにぎりの左半身が出てくる。

また、その逆も引っ張れば、パリパリ海苔を身に纏ったおにぎりを食すことができるのだ。

しかし、赤飯おにぎりは丸型だ。

開け方は、ふつうのおにぎりとは異なり、赤飯おにぎりを正位置にして、上から出ているテープを1周引っ張る。

テープと一緒に、ビニルを半分取ってしまえば、左半身からでも右半身からでも好きな方から食べることができるのだ。

つまり、赤飯おにぎりはふつうのおにぎりよりも早く食べ始めることができる。

赤飯のおにぎりは、貴重な昼食の時間をも考慮された時短商品だったことにも気づいてしまったのだ。

もう、僕の心は赤飯のおにぎりに鷲掴みにされてしまったのだ。

知れば知るほど、沼にはまっていく感覚を今でもはっきりと覚えている。

まさに好奇心と恐怖、それは次の日6時起きなのに、wikipediaから離れられなくなっている深夜2時と酷似している。

ようやく、僕は思い切って赤飯おにぎりの左半身にかぶりつく。

感動だった。

喉につっかえるとかそんなことは抜きにして、とにかくおいしい!

赤飯自体は、甘みがあって香りが気持ちよく、そこに塩と黒ごまの優しい主張がある。

さらには、コメのしっとりとした食感に紛れて、時々豆の食感が現れて咀嚼のリズムに調子が出てくる。

とにかく、このもちもち感が最高においしいのである!

今までは、パリパリしたおにぎりがベースにあって、中の具で優劣をつけナンバーワンを争っていたが、もちもちした赤飯おにぎりは他とは争わない唯一無二、オンリーワンおにぎりであることを知ることになったのである。

つまり、世界に一つだけのおにぎりである。

こんなにおいしいおにぎりを知らなかったなんて、今までなんてもったいないことをしていたんだ。

僕は、そんな自分を悔い改めるべく、今後の人生でコンビニのおにぎりは、必ず赤飯おにぎりを決め、小馬鹿にしたことをハセガワに詫びた。

やっぱり、おにぎりはうめ

実際に、僕はそれから1ヶ月ぐらい、コンビニでおにぎりを買うときは、赤飯おにぎりを購入するように努めていた。

その期間は、他の同期や友人にも、「コンビニの赤飯のおにぎり食べたことある? いや、実はあれめちゃくちゃおいしくてさ〜」と愛赤家としての布教活動にも力を入れていた。

しかし、いくらオンリーワンおにぎりでしっとりもちもちの時短商品と言えども、万年トップを走り続けていたパリパリおにぎりチームの巻き返しは早かった。

やはり、おにぎりは「うめ」である。

思わず口を突き出してしまう、あの梅の酸っぱさで胃を刺激して、まずは食欲を上げるのだ。

それから、「さけ」「こんぶ」「おかか」の旨味成分たっぷりチームだ。

はっきり言って、僕はふつうのおにぎりアレルギーを持っていないので、しっとりもちもち代替品は不要なのだ。

ということで、コンビニで赤飯おにぎりを手にとるやつは地球上でハセガワ一人に戻ってしまった。

しかし、赤飯おにぎりを食べたことがない人は、是非一度食べてみて欲しい。

人生観変わるよ。

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ryo1985
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